日本の多くの山が、冬季は雪に覆われます。雪は風上から吹き払われ、風下に吹きだまるため、とくに森林限界を越えた場所では、稜線を挟んで非対称な景観をみることができます。例えば、吹きだまった雪が遅くまで残るところでは、周囲とは異なる草地や裸地になっていたりします。また、日本アルプスでは、数万年前の氷河期に、雪がたまりやすい東向きに氷河がよく発達した結果、現在、その氷河がつくったお椀状の地形(カール)が並んでいます。
ここで紹介する研究では、氷河よりもずっと小さなスケールですが、吹きだまった雪が急斜面をずるずると滑って、地面をところどころ今も削っている様子を調べています。調べている学生は、つくばから足繁く上越国境に通って山に登ります(写真1)。まず雪がどこにどれくらい積もっているのかを知りたいのですが、対象地は、雪が深くて測深棒が役に立たない、しかも時期によっては雪崩の危険があって入れない場所にあります。そこでドローンからの空撮写真を用いて測量しました(図1)。測量によって明らかにした雪面の標高から、無雪期の標高を差し引くと雪の深さがわかります(図2)。実際に地面がどれくらい削られたのかを調べる方法の一つも、同じにように、異なる時期に写真測量を実施して、それぞれの地表面の高さの差を取ることです。ただ、こちらは数cm単位で高さの変化を知るために、上空からではなく、長い棒の先に付けたカメラで画像を撮っています。
こうした写真測量手法を活用すると、何気なく見ていると同じように見える山の景色が、実はあちこちで変化していることを詳しく知ることができます。