植生とは、森林や草原など植物の面的な広がりのこと指します。この植生を単位性のあるまとまりとして捉えたものが群落です。例としては、ブナ林、ススキ草原などがあります。これらは、量的に最も多い植物、すなわち優占種を基に名前が付けられています。植物の種には学名がありますが、森林を含めた群落にも学名とそれを命名する学問分野があります。植物社会学は植生の分類学に相当する学問であり、種に相当するものを群集(association)と呼びます。この群集は、種の組み合わせ(種組成)に基づいて分類されます。たとえば、ブナ-シラキ群集というのは、シラキを伴ったブナ林という意味になり、シロモジなどが特徴的出現します。このブナ-シラキ群集は、九州、四国、紀伊半島というブナ林としては南限地域に分布します。種の分類と同様に属や科に相当する単位があり、群団、オーダーとそれぞれ呼ばれます。下記は日本のブナ林の全5群集と全2群団を示したものとなります。これらは地理的に分布が分かれており、特に2群団に着目すると、多雪地の日本海側にブナ群団、寡雪地の太平洋側にブナ-スズタケ群団が分布し、気候条件と地理的分布が見事に対応しています(図)。種組成に基づいて森を分類することで、森だけでなく、森と気候、森と立地との関係も具体的に認識できるようになるのです。
- Sasamorpha-Fagion crenatae (Miyawaki, Ohba et Murase, 1964)
(ブナ-スズタケ群団)- Sapio japonica-Fagetum crenatae (Sasaki, Yo, 1970)
(ブナ-シラキ群集) - Corno-Fagetum crenatae (Miyawaki, Ohba et Murase, 1964)
(ブナ-ヤマボウシ群集) - Sasamorpha-Fagetum crenatae (Suz.-Tok., 1949)
(ブナ-スズタケ群集)
- Sapio japonica-Fagetum crenatae (Sasaki, Yo, 1970)
- Fagion crenatae (Suz.-Tok., 1952)
(ブナ群団)- Lindero umbellatae-Fagetum crenatae (Horikawa et Sasaki, 1959)
(ブナ-クロモジ群集) - Saso kuriensis-Fagetum crenatae (Suz.-Tok., 1949)
(ブナ-チシマザサ群集)
- Lindero umbellatae-Fagetum crenatae (Horikawa et Sasaki, 1959)
注:「福嶋司ほか(1995)日本のブナ林群落の植物社会学的新体系.日本生態学会誌 45巻」、「福島司(編著)(2017)図説日本の植生第2版.朝倉書店」を基に作成した。