日本に限らず、多くの山岳域では森林が発達しています。山の森を構成する樹種は場所ごとに異なります。日本の中部山岳域だけでも、幅広い標高帯や斜面の地形、火山由来なのか否かというように、その成り立ちの歴史や特徴も多面にわたります。立地環境に応じて、そこに生育する樹木種や森林の高さなどの構造も変わります。その変化が何によって生じるのかを解き明かすことで、その山岳域の森林の特徴を掴むことができます。それには多くの場所での比較が肝要です。筑波大学山岳科学センターとその周囲の森林は、これを解き明かすには適した場所です。森林内に固定試験地(プロットといいます)を設定し、樹木の高さや幹の太さを測定し、数年に一度はどの程度成長したのか、いつ枯死してしまったのか、という情報を測定していきます。測定そのものはかなり単純で地味な作業です。しかし、長い期間で積み重ねた測定データからでしか森林の動きを観ることはできません。また、場所ごとの特徴を観るには多くの場所での観測が必要です。動かざること山の如しとの言葉もありますが、人間の目には一見分からない山と森の動きを観ています。